ギターをパソコンにつないでいると、
「VST」「VST3」「プラグイン」
という言葉をよく見かけます。
アンプシミュレーターを使ったことがある人なら、
知らないうちにVSTを使っているかもしれません。
今回はSource Audio ZIOの研究から少し寄り道して、
「そもそもVSTって何?」
というところから始めます。
というのも、これからZIOの考え方を研究するために、
自分でVSTプラグインを作ってみることにしたからです。
VSTの専門家になることではありません。
「パソコンの中にギター用の実験装置を作れるんだ」
というところまで分かればOKです。
そもそもVSTプラグインとは?
VST(Virtual Studio Technology)は、
DAWなどの音楽制作ソフト上で使用されるプラグイン技術です。
難しく聞こえますが、ギタリストなら
「パソコンの中に追加できるエフェクターや音響機器」
と考えるとイメージしやすいと思います。

例えば、パソコンの中に、
- ギターアンプ
- オーバードライブ
- ディレイ
- リバーブ
- EQ
- コンプレッサー
などを追加できます。
実物のエフェクターを足元につなぐ代わりに、
DAWの中へエフェクターを追加するイメージです。
ギターの音はどうやってVSTまで届く?
まずギターをオーディオインターフェースへ接続します。
↓
オーディオインターフェース
↓
パソコン / DAW
↓
VSTプラグイン
↓
🎧 ヘッドホン / スピーカー
例えばアンプシミュレーターをVSTとして使用すれば、
パソコンの中でアンプを通したような音を作れます。
ここまでは、普通のDTMや宅録と同じです。
今回やってみたいのは、ここからもう一歩先です。
VSTは「音を良くする」だけではない
VSTというと、
「良いギターサウンドを作るためのもの」
という印象が強いかもしれません。
でも、自分でVSTを作れるなら、
音を研究するための実験装置にもできます。
例えば、
↓
ケーブル容量を変更する
↓
フィルターを変更する
↓
倍音を追加する
↓
音がどう変化するか比較する
といった実験ができます。
なぜSource Audio ZIOの研究にVSTを使うのか?
今回研究している
Source Audio ZIO Analog Front End + Boostは、
ギターの信号を次の機材へ送る前段に置くフロントエンドです。

公開されている仕様を見ると、
入力インピーダンスや低い出力インピーダンス、
複数のプリアンプモードなど、
「歪ませる前のギター信号」を考えるうえで面白い要素があります。
そこで思ったのが、
「条件を自由に変更できる実験用VSTを作ったら、
ギターの信号についてもっと詳しく調べられるのでは?」
ということでした。
実機を作る前にVSTで試してみる
アナログ回路で実験する場合、
抵抗やコンデンサを変更するたびに、
部品交換やはんだ付けが必要になります。
もちろん、それも面白い研究です。
ただ、最初の仮説を試す段階ならVSTには大きなメリットがあります。
↓
VSTで条件だけ変更
↓
音を比較
↓
数値でも測定
↓
面白いものを実機で試す
同じ演奏データを使えるため、
演奏の違いを減らして比較できるのもメリットです。
最初に研究するのは「入力インピーダンス」
最初に試してみたいのが、
入力インピーダンスです。
いきなり難しい言葉が出てきましたが、
ここでは詳しい計算まで覚える必要はありません。
パッシブギターのピックアップは、
接続する機材によって完全に同じ状態で鳴るわけではありません。
そこで研究用VSTでは、
500kΩ / 1MΩ / 2MΩ
という3種類の条件を用意することにしました。
かなり簡単に表現するなら、
バッファやフロントエンドでは、
「ギターには優しく受けて、次の機材には力強く送り出す」
という考え方が重要になります。
もう一つ研究したい「ケーブル容量」
ギターケーブルも、ただ信号を運んでいるだけではありません。
ケーブルには静電容量(Capacitance)があります。
さらにギターのピックアップには、
抵抗成分だけでなくインダクタンスがあります。
R(抵抗)+ L(インダクタンス)
+
ギターケーブル
C(静電容量)
+
接続先
Input R(入力抵抗)
↓
周波数特性や共振に影響
つまり、
ピックアップ・ケーブル・接続先は別々ではなく、
組み合わせで考える必要があるということです。
そこで「ZIO Research」を作る
今回作るVSTを、
「ZIO Research」
としました。
ただし、これはZIOのクローンではありません。
ZIO ResearchはSource Audio ZIOの内部回路を完全再現したVSTではありません。
公開情報と一般的な回路理論を参考に、
ギターの入力条件やフロントエンドを研究するために作る
独自の実験用VSTです。
最初のV0.1では、
| 機能 | 設定 |
|---|---|
| Virtual Input Z | 500kΩ / 1MΩ / 2MΩ |
| Cable Capacitance | 100~1500pF |
| Pickup | 研究用基準モデル |
| Front End | JFET Clean基準モデル |
| Output | -2~+20dB |
注意:VSTで本物の入力インピーダンスは変えられない
ここは非常に重要です。
録音したDIデータには、
録音時に使用したピックアップ、ケーブル、
オーディオインターフェースなどの影響がすでに含まれています。
そのためVSTで「1MΩ」に設定したからといって、
実際のギターが物理的な1MΩ入力につながった状態になるわけではありません。
今回扱うのは、
Virtual Input Z(仮想的な入力負荷)です。
この違いを区別しながら研究を進めます。
次回は実際にVST3を作る
ここまでで、
「なぜVSTを作るのか」が見えてきました。
次回はいよいよ、
を使って、実際にZIO Research V0.1を作ります。
プログラミング経験がなくても流れが分かるように、
まずは「何もしないVST」からスタートします。
そして実際に遭遇したエラーも含めて、
VST3としてビルドできるところまで紹介します。
ZIOをコピーするのではなく、
ZIOを入口に「良いギター信号とは何なのか?」を研究する。
そのための実験装置を、次回から実際に作っていきます。


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