#02 Source Audio ZIOを研究|VSTプラグインとは?ギターの回路研究にVSTを使ってみる

エフェクター研究

ギターをパソコンにつないでいると、
「VST」「VST3」「プラグイン」
という言葉をよく見かけます。

アンプシミュレーターを使ったことがある人なら、
知らないうちにVSTを使っているかもしれません。

今回はSource Audio ZIOの研究から少し寄り道して、
「そもそもVSTって何?」
というところから始めます。

というのも、これからZIOの考え方を研究するために、
自分でVSTプラグインを作ってみることにしたからです。

この記事のゴール

VSTの専門家になることではありません。
「パソコンの中にギター用の実験装置を作れるんだ」
というところまで分かればOKです。

そもそもVSTプラグインとは?

VST(Virtual Studio Technology)は、
DAWなどの音楽制作ソフト上で使用されるプラグイン技術です。

難しく聞こえますが、ギタリストなら
「パソコンの中に追加できるエフェクターや音響機器」
と考えるとイメージしやすいと思います。

例えば、パソコンの中に、

  • ギターアンプ
  • オーバードライブ
  • ディレイ
  • リバーブ
  • EQ
  • コンプレッサー

などを追加できます。

実物のエフェクターを足元につなぐ代わりに、
DAWの中へエフェクターを追加するイメージです。

ギターの音はどうやってVSTまで届く?

まずギターをオーディオインターフェースへ接続します。

🎸 ギター
↓
オーディオインターフェース
↓
パソコン / DAW
↓
VSTプラグイン
↓
🎧 ヘッドホン / スピーカー

例えばアンプシミュレーターをVSTとして使用すれば、
パソコンの中でアンプを通したような音を作れます。

ここまでは、普通のDTMや宅録と同じです。

今回やってみたいのは、ここからもう一歩先です。

VSTは「音を良くする」だけではない

VSTというと、
「良いギターサウンドを作るためのもの」
という印象が強いかもしれません。

でも、自分でVSTを作れるなら、
音を研究するための実験装置にもできます。

例えば、

入力条件を変更する
↓
ケーブル容量を変更する
↓
フィルターを変更する
↓
倍音を追加する
↓
音がどう変化するか比較する

といった実験ができます。

なぜSource Audio ZIOの研究にVSTを使うのか?

今回研究している
Source Audio ZIO Analog Front End + Boostは、
ギターの信号を次の機材へ送る前段に置くフロントエンドです。

公開されている仕様を見ると、
入力インピーダンスや低い出力インピーダンス、
複数のプリアンプモードなど、
「歪ませる前のギター信号」を考えるうえで面白い要素があります。

そこで思ったのが、


「条件を自由に変更できる実験用VSTを作ったら、
ギターの信号についてもっと詳しく調べられるのでは?」

ということでした。

実機を作る前にVSTで試してみる

アナログ回路で実験する場合、
抵抗やコンデンサを変更するたびに、
部品交換やはんだ付けが必要になります。

もちろん、それも面白い研究です。

ただ、最初の仮説を試す段階ならVSTには大きなメリットがあります。

同じギターDI音源
↓
VSTで条件だけ変更
↓
音を比較
↓
数値でも測定
↓
面白いものを実機で試す

同じ演奏データを使えるため、
演奏の違いを減らして比較できるのもメリットです。

最初に研究するのは「入力インピーダンス」

最初に試してみたいのが、
入力インピーダンスです。

いきなり難しい言葉が出てきましたが、
ここでは詳しい計算まで覚える必要はありません。

パッシブギターのピックアップは、
接続する機材によって完全に同じ状態で鳴るわけではありません。

そこで研究用VSTでは、


500kΩ / 1MΩ / 2MΩ

という3種類の条件を用意することにしました。

かなり簡単に表現するなら、
バッファやフロントエンドでは、


「ギターには優しく受けて、次の機材には力強く送り出す」

という考え方が重要になります。

もう一つ研究したい「ケーブル容量」

ギターケーブルも、ただ信号を運んでいるだけではありません。

ケーブルには静電容量(Capacitance)があります。

さらにギターのピックアップには、
抵抗成分だけでなくインダクタンスがあります。

ピックアップ
R(抵抗)+ L(インダクタンス)
+
ギターケーブル
C(静電容量)
+
接続先
Input R(入力抵抗)
↓
周波数特性や共振に影響

つまり、
ピックアップ・ケーブル・接続先は別々ではなく、
組み合わせで考える必要がある
ということです。

そこで「ZIO Research」を作る

今回作るVSTを、
「ZIO Research」
としました。

ただし、これはZIOのクローンではありません。

重要

ZIO ResearchはSource Audio ZIOの内部回路を完全再現したVSTではありません。

公開情報と一般的な回路理論を参考に、
ギターの入力条件やフロントエンドを研究するために作る
独自の実験用VSTです。

最初のV0.1では、

機能設定
Virtual Input Z500kΩ / 1MΩ / 2MΩ
Cable Capacitance100~1500pF
Pickup研究用基準モデル
Front EndJFET Clean基準モデル
Output-2~+20dB

注意:VSTで本物の入力インピーダンスは変えられない

ここは非常に重要です。

録音したDIデータには、
録音時に使用したピックアップ、ケーブル、
オーディオインターフェースなどの影響がすでに含まれています。

そのためVSTで「1MΩ」に設定したからといって、
実際のギターが物理的な1MΩ入力につながった状態になるわけではありません。

今回扱うのは、
Virtual Input Z(仮想的な入力負荷)です。

この違いを区別しながら研究を進めます。

次回は実際にVST3を作る

ここまでで、
「なぜVSTを作るのか」が見えてきました。

次回はいよいよ、

Visual Studio + C++ + CMake + JUCE

を使って、実際にZIO Research V0.1を作ります。

プログラミング経験がなくても流れが分かるように、
まずは「何もしないVST」からスタートします。

そして実際に遭遇したエラーも含めて、
VST3としてビルドできるところまで紹介します。


ZIOをコピーするのではなく、
ZIOを入口に「良いギター信号とは何なのか?」を研究する。

そのための実験装置を、次回から実際に作っていきます。

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