今回研究するのは、Source Audioの 「ZIO Analog Front End + Boost」です。
普通のブースターなら「音量を上げるエフェクター」と考えてしまいますが、 ZIOを調べてみると少し違いました。
ZIOが狙っているのは、 ギターから出た繊細な信号を整えて、次のエフェクターやアンプへ安定して送り出すこと。
ZIOってどんなエフェクター?
ZIOは2022年に登場した、Source Audio初のオールアナログ・エフェクターです。
SHOE PedalsのChristopher Venterとの共同開発で、
4種類のプリアンプと最大+20dBのブーストを搭載しています。
名前の「ZIO」は、
Impedance(Z)・Input(I)・Output(O)
から付けられています。
つまり最初から、
「インピーダンスをどう扱うか」
が製品コンセプトに入っています。
ZIOの主な仕様
| 方式 | オールアナログ |
|---|---|
| 入力インピーダンス | 1MΩ |
| 出力インピーダンス | 150Ω |
| OUTPUT | -2~+20dB |
| プリアンプ | JFET / LOW-CUT / STUDIO / E-PLEX |
| TONE | BRIGHT / MEDIUM / DARK |
| 消費電流 | 20mA |
| 電源 | 9~18V DC(国内正規仕様) |
| バイパス | True Bypass |
| その他 | Tuner / Line Out |
数字だけ見ると地味ですが、
今回注目したいのは「1MΩで入力して150Ωで出力する」ところです。
ZIOの1MΩ入力・150Ω出力にはどんな意味がある?
パッシブ・ピックアップから出てくる信号は、
後ろにつながる機材やケーブルの影響を受けやすい信号です。

ZIOは約1MΩという高い入力インピーダンスで受け、
内部で信号を処理したあと、
約150Ωという低いインピーダンスで送り出します。
初心者向けに言ってしまえば、
「ギターには優しく受けて、次の機材には力強く送り出す」
という考え方です。
この仕組みがあることで、
長いケーブルや複数のエフェクターを通した場合でも
信号を安定して送りやすくなります。
ZIOの4種類のプリアンプを分析
JFET ― まずは音を壊さない
JFETモードは4種類の中で最も素直なモードです。
メーカーはフラットで低歪みな特性として説明しています。

今回の研究では、
「何も足さないプリアンプを通しただけで何が変わるのか?」
を見る基準として使えそうです。
LOW-CUT ― 低音を減らして余裕を作る
LOW-CUTは不要な低域を減らすモードです。
ここで重要なのは、
「低音を減らして細い音にする」ことだけが目的ではありません。
大きな低域信号も増幅回路の余裕を消費します。
そこで不要な低域を先に整理すると、
必要なギター帯域に使えるヘッドルームを確保しやすくなります。
これは後に研究するハイゲイン・ディストーションでも
かなり重要になりそうです。
STUDIO ― 足すより先に邪魔な音を整理する
STUDIOモードは「Pultec Trick」と呼ばれる
スタジオEQの考え方から着想したモードです。
単純に高音を上げるのではなく、
低域や濁りやすいLow-Midを整理することで、
Upper-MidやPresenceを前に出す方向です。
つまり「足して良くする」だけではなく、
「邪魔なところを減らして良くする」。
この考え方は今後作るハイゲイン回路にも使えそうです。
E-PLEX ― わざと少し歪ませる
E-PLEXはヴィンテージEchoplexのプリアンプを意識したモードです。
JFET、LOW-CUT、STUDIOが基本的に低歪みなのに対して、
E-PLEXではわずかな歪みを加えます。
ここで研究したいのが倍音です。
単なるEQによる音色変化なのか、
それとも2次・3次倍音などが加わることで
「暖かい」「太い」と感じるのか。
これは後でVSTを作って実際に測定します。
BRIGHT・MEDIUM・DARKは普通のToneではない
これもZIOの面白いところです。
3段階のTONEスイッチは単純なTreble調整ではなく、
ギターケーブルの容量(キャパシタンス)の違い
をシミュレートしています。
長いケーブルを使うと、
パッシブ・ピックアップでは高域が変化します。
普通のバッファなら、その影響を減らす方向へ進みます。
ところがZIOは、
必要ならケーブルによる音色変化を意図的に戻せる。
ここはかなり面白い設計です。
9Vと18Vで何が変わる?
国内正規仕様では9~18Vで動作します。

電源電圧を高くすると、
回路設計によっては信号が限界に達するまでの余裕、
つまりヘッドルームを大きくできます。
ただし、
18V=必ず良い音
ではありません。
歪ませることが目的なら、
逆に電圧を高くしたことで歪みにくくなる可能性もあります。
ここは実験します。
9Vと18Vで同じ信号を入力し、
どこから歪み始めるのか、
倍音やピークがどう変化するのかを比較します。
ZIOと一般的なブースター・プリアンプとの違い
一般的なクリーンブースターなら、
主な目的は信号レベルを上げることです。
ZIOはそれに加えて、
入力負荷、ケーブル容量、低域整理、EQ、
軽い非線形処理、低インピーダンス出力まで扱います。
そのため、
「ソロの時だけ音量を上げたい」
という用途ならZIOである必要性は低いでしょう。
逆に、
「ギターから出た信号そのものを良い状態にしてから音作りを始めたい」
という用途では面白い製品です。
ZIOはどこに接続する?おすすめの使用場面
最も分かりやすいのはペダルボードの最初です。
Guitar → ZIO → Drive → Modulation → Amp
最初に信号を整えてから、
後ろのエフェクターへ送ります。
しかし歪みの後ろへ置いて音を整理したり、
ペダルボード最後段から長いケーブルを駆動したり、
アンプのFX Loopでレベル調整する使い方もできます。
ZIOのアナログ回路を公開仕様から予想
完全な公式回路図は公開されていません。
そこで公開仕様から研究用の構成を予想します。

GUITAR INPUT
↓
1MΩ INPUT
↓
Cable Capacitance
↓
JFET Input Stage
↓
4 MODE PREAMP
├ JFET
├ LOW-CUT
├ STUDIO
└ E-PLEX
↓
OUTPUT GAIN
-2 ~ +20dB
↓
Low-Z Driver
↓
150Ω OUTPUT
実際の部品配置や定数とは違う可能性があります。
しかし今回の目的はZIOをコピーすることではありません。
「なぜ、この構成にするとギター信号が扱いやすくなるのか?」
を自分で作って確認することです。
ZIOの考え方をVSTで再現して検証する
次回は今回調べた内容を使って、
ZIOの考え方を取り入れた研究用VSTを作ります。
再現する予定なのは、
- 500kΩ / 1MΩ / 2MΩ相当の入力負荷
- ケーブル容量
- LOW-CUT
- STUDIO型EQ
- E-PLEX型の軽い非線形処理
- 9V / 18V相当のヘッドルーム
- 最大+20dBのゲイン
そして同じギターDIを使い、
Peak・RMS・倍音・THD・周波数特性
を比較します。
今回の結論
ZIOで一番面白かったのは「良い音を足す」ことより、
良い状態の信号を作ってから次へ渡す
という考え方でした。
ノイズレス、倍音、ハイゲインを研究する前に、
まず入口を理解する。
次回はこれをパソコン上で実際に作ってみます。
参考:Source Audio ZIO Analog Front End + Boost 公式製品情報・User Guide、
岡田インターナショナル SA271 ZIO製品仕様。



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