#01 Source Audio ZIOを研究|「良い音」の前に良い信号を作るアナログ回路とは?

エフェクター研究

今回研究するのは、Source Audioの 「ZIO Analog Front End + Boost」です。

普通のブースターなら「音量を上げるエフェクター」と考えてしまいますが、 ZIOを調べてみると少し違いました。

ZIOが狙っているのは、 ギターから出た繊細な信号を整えて、次のエフェクターやアンプへ安定して送り出すこと。

ZIOってどんなエフェクター?

ZIOは2022年に登場した、Source Audio初のオールアナログ・エフェクターです。
SHOE PedalsのChristopher Venterとの共同開発で、
4種類のプリアンプと最大+20dBのブーストを搭載しています。

名前の「ZIO」は、
Impedance(Z)・Input(I)・Output(O)
から付けられています。

つまり最初から、
「インピーダンスをどう扱うか」
が製品コンセプトに入っています。

▶
Source Audio ZIO 公式製品ページ

ZIOの主な仕様

方式オールアナログ
入力インピーダンス1MΩ
出力インピーダンス150Ω
OUTPUT-2~+20dB
プリアンプJFET / LOW-CUT / STUDIO / E-PLEX
TONEBRIGHT / MEDIUM / DARK
消費電流20mA
電源9~18V DC(国内正規仕様)
バイパスTrue Bypass
その他Tuner / Line Out

数字だけ見ると地味ですが、
今回注目したいのは「1MΩで入力して150Ωで出力する」ところです。

ZIOの1MΩ入力・150Ω出力にはどんな意味がある?

パッシブ・ピックアップから出てくる信号は、
後ろにつながる機材やケーブルの影響を受けやすい信号です。

ZIOは約1MΩという高い入力インピーダンスで受け、
内部で信号を処理したあと、
約150Ωという低いインピーダンスで送り出します。

初心者向けに言ってしまえば、
「ギターには優しく受けて、次の機材には力強く送り出す」
という考え方です。

この仕組みがあることで、
長いケーブルや複数のエフェクターを通した場合でも
信号を安定して送りやすくなります。

ZIOの4種類のプリアンプを分析

JFET ― まずは音を壊さない

JFETモードは4種類の中で最も素直なモードです。
メーカーはフラットで低歪みな特性として説明しています。

今回の研究では、
「何も足さないプリアンプを通しただけで何が変わるのか?」
を見る基準として使えそうです。

LOW-CUT ― 低音を減らして余裕を作る

LOW-CUTは不要な低域を減らすモードです。

ここで重要なのは、
「低音を減らして細い音にする」ことだけが目的ではありません。

大きな低域信号も増幅回路の余裕を消費します。
そこで不要な低域を先に整理すると、
必要なギター帯域に使えるヘッドルームを確保しやすくなります。

これは後に研究するハイゲイン・ディストーションでも
かなり重要になりそうです。

STUDIO ― 足すより先に邪魔な音を整理する

STUDIOモードは「Pultec Trick」と呼ばれる
スタジオEQの考え方から着想したモードです。

単純に高音を上げるのではなく、
低域や濁りやすいLow-Midを整理することで、
Upper-MidやPresenceを前に出す方向です。

つまり「足して良くする」だけではなく、
「邪魔なところを減らして良くする」。

この考え方は今後作るハイゲイン回路にも使えそうです。

E-PLEX ― わざと少し歪ませる

E-PLEXはヴィンテージEchoplexのプリアンプを意識したモードです。

JFET、LOW-CUT、STUDIOが基本的に低歪みなのに対して、
E-PLEXではわずかな歪みを加えます。

ここで研究したいのが倍音です。

単なるEQによる音色変化なのか、
それとも2次・3次倍音などが加わることで
「暖かい」「太い」と感じるのか。

これは後でVSTを作って実際に測定します。

BRIGHT・MEDIUM・DARKは普通のToneではない

これもZIOの面白いところです。

3段階のTONEスイッチは単純なTreble調整ではなく、
ギターケーブルの容量(キャパシタンス)の違い
をシミュレートしています。

長いケーブルを使うと、
パッシブ・ピックアップでは高域が変化します。

普通のバッファなら、その影響を減らす方向へ進みます。

ところがZIOは、
必要ならケーブルによる音色変化を意図的に戻せる。

ここはかなり面白い設計です。

9Vと18Vで何が変わる?

国内正規仕様では9~18Vで動作します。

電源電圧を高くすると、
回路設計によっては信号が限界に達するまでの余裕、
つまりヘッドルームを大きくできます。

ただし、
18V=必ず良い音
ではありません。

歪ませることが目的なら、
逆に電圧を高くしたことで歪みにくくなる可能性もあります。

ここは実験します。
9Vと18Vで同じ信号を入力し、
どこから歪み始めるのか、
倍音やピークがどう変化するのかを比較します。

ZIOと一般的なブースター・プリアンプとの違い

一般的なクリーンブースターなら、
主な目的は信号レベルを上げることです。

ZIOはそれに加えて、
入力負荷、ケーブル容量、低域整理、EQ、
軽い非線形処理、低インピーダンス出力まで扱います。

そのため、
「ソロの時だけ音量を上げたい」
という用途ならZIOである必要性は低いでしょう。

逆に、
「ギターから出た信号そのものを良い状態にしてから音作りを始めたい」
という用途では面白い製品です。

ZIOはどこに接続する?おすすめの使用場面

最も分かりやすいのはペダルボードの最初です。

Guitar → ZIO → Drive → Modulation → Amp

最初に信号を整えてから、
後ろのエフェクターへ送ります。

しかし歪みの後ろへ置いて音を整理したり、
ペダルボード最後段から長いケーブルを駆動したり、
アンプのFX Loopでレベル調整する使い方もできます。

ZIOのアナログ回路を公開仕様から予想

完全な公式回路図は公開されていません。
そこで公開仕様から研究用の構成を予想します。

GUITAR INPUT
      ↓
1MΩ INPUT
      ↓
Cable Capacitance
      ↓
JFET Input Stage
      ↓
4 MODE PREAMP
 ├ JFET
 ├ LOW-CUT
 ├ STUDIO
 └ E-PLEX
      ↓
OUTPUT GAIN
-2 ~ +20dB
      ↓
Low-Z Driver
      ↓
150Ω OUTPUT

実際の部品配置や定数とは違う可能性があります。

しかし今回の目的はZIOをコピーすることではありません。

「なぜ、この構成にするとギター信号が扱いやすくなるのか?」
を自分で作って確認することです。

ZIOの考え方をVSTで再現して検証する

次回は今回調べた内容を使って、
ZIOの考え方を取り入れた研究用VSTを作ります。

再現する予定なのは、

  • 500kΩ / 1MΩ / 2MΩ相当の入力負荷
  • ケーブル容量
  • LOW-CUT
  • STUDIO型EQ
  • E-PLEX型の軽い非線形処理
  • 9V / 18V相当のヘッドルーム
  • 最大+20dBのゲイン

そして同じギターDIを使い、
Peak・RMS・倍音・THD・周波数特性
を比較します。

今回の結論
ZIOで一番面白かったのは「良い音を足す」ことより、
良い状態の信号を作ってから次へ渡す
という考え方でした。

ノイズレス、倍音、ハイゲインを研究する前に、
まず入口を理解する。
次回はこれをパソコン上で実際に作ってみます。



参考:Source Audio ZIO Analog Front End + Boost 公式製品情報・User Guide、
岡田インターナショナル SA271 ZIO製品仕様。

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